【2025情報Ⅰ】第1問-問4 徹底解説

問4 次の文章を読み、後の問い(a・b)に答えよ。

 マウスカーソルをメニューやアイコンなどの対象物に移動する操作をモデル化し、Webサイトやアプリケーションのユーザインタフェースをデザインする際に利用されている法則がある。この法則では、次のことが知られている。

  • 対象物が大きいほど、対象物に移動するときの時間が短くなる。
  • 対象物への距離が短いほど、対象物に移動するときの時間が短くなる。

a 次の文章中の空欄[ケ]に入れるのに最も適当なものを、図の⓪~③のうちから一つ選べ。

 この法則では、PCなどでマウスを操作する場合、マウスカーソルはディスプレイの端で止まるため、ディスプレイの端にある対象物は実質的に大きさが無限大になると考える。
 この法則に基づくと、図の⓪~③で示した対象物のうち、現在ディスプレイ上の黒矢印で示されているマウスカーソルの位置から、最も短い時間で指し示すことができるのは[ケ]である。

正解:②

この問題は、UIデザインで有名な「フィッツの法則」に基づいています。この法則のポイントは2つです。

  1. 対象物が大きいほど、速く指し示せる
  2. カーソルからの距離が近いほど、速く指し示せる

これに加えて、問題文にはPC操作における重要なヒントが書かれています。

「ディスプレイの端にある対象物は、実質的に大きさが無限大になる。」

これは、マウスカーソルが画面の端で止まるため、勢いよくマウスを端まで動かせば、細かい照準を合わせる必要がないからです。特に画面の四隅は、上下と左右の二方向に対して大きさが無限大とみなせるため、最も簡単にポイントできる場所となります。


この選択肢は、距離と大きさの両方の面で不利です。
①よりも遠く、②や③のような画面の端にあるというアドバンテージもありません。明らかに最も時間がかかる選択肢と言えます。


距離が近い点は有利ですが、このオブジェクトは画面の内部にあり、大きさが有限です。
つまり、ターゲットを通り過ぎないように、カーソルを正確に動かして止める「減速」と「照準合わせ」の操作が必要です。この微調整に時間がかかってしまいます


大きさが無限な点では有利ですが、このオブジェクトは現在のカーソルの位置から②よりも遠い位置にあります。

b 次の文章中の空欄[コ]・[サ]に入れるのに最も適当なものを、後の解答群のうちから一つずつ選べ。

 操作時間を短くするためにこの法則を適用した事例として、利用頻度に基づいてメニュー項目を配置する方法がある。
 ここでは、マウスを右クリックした際に、マウスカーソルに対して図に示すような位置で表示されるメニュー項目の配置について考える。マウスカーソルで選択できる各メニュー項目の大きさは同じであるとし、この法則のみに沿って設計されたとすると、「項目」は、他の項目と比べ利用頻度が[コ]項目なので、意図的に[サ]に配置されていると考えられる。

[コ]の解答群

⓪低い
①同程度の
②高い

[サ]の解答群

⓪メニューの中で一番目立つ場所
①マウスカーソルの位置から遠い場所
②マウスで素早く選択できる場所

正解:
[コ]=⓪低い,
[サ]=①マウスカーソルの位置から遠い場所

この問題は、前の問題に引き続き「フィッツの法則」を応用したものです。この法則の要点は「カーソルから近い対象物ほど、速く選択できる」という点です。

【コ】の考え方

まず、メニューの設計原則を理解しましょう。このメニューは「利用頻度」に基づいて、操作時間が短くなるように設計されています。つまり、よく使う項目ほど、速く選択できる場所に配置されるはずです。

図6を見ると、「項目5」はマウスカーソルから最も遠い位置にあります。フィッツの法則によれば、最も遠い位置は、選択するのに最も時間がかかる(=遅い)場所です。

最も遅い場所に配置されているということは、その項目はあまり使われない、つまり利用頻度が「低い」と判断するのが合理的です。

①同程度の
もし他の項目と利用頻度が同じくらいなのであれば、わざわざ一番遠くて操作しにくい(=時間がかかる)場所に配置する積極的な理由がありません。
メニュー設計では、特に優先順位がない限り、関連する項目をまとめたり、アルファベット順にしたりするのが一般的です。「意図的に」遠くに置いた、と考えるには根拠が弱くなります。

②高い
これは正解とは全く逆の考え方です。もし「項目5」の利用頻度が高いのであれば、フィッツの法則に従って、マウスカーソルから最も近い場所(=最も速く選択できる場所)、つまり「項目1」のような位置に配置されるはずです。
利用頻度の高い項目を、わざわざ最も不便な場所に置くのは、操作時間を短くするという設計目的と矛盾します。

【サ】の考え方

【コ】の結論から続けます。「項目5」は利用頻度が低いため、意図的に操作しにくい(=時間がかかる)場所に配置されています。

では、「操作に時間がかかる場所」とは具体的にどこでしょうか。
フィッツの法則に照らし合わせると、それは「マウスカーソルの位置から遠い場所」です。

したがって、利用頻度が低い「項目5」は、意図的に①マウスカーソルの位置から遠い場所に配置されていると考えられます。

⓪メニューの中で一番目立つ場所
「目立つ」というのは、色や太字、アイコンの有無といった視覚的なデザインの話です。
一方で、この問題で問われているフィッツの法則は、カーソルを動かす物理的な時間と距離に関する法則です。
一番遠い場所が必ずしも一番目立つとは限りませんし、操作の速さとは直接関係がありません。論点がずれています。

②マウスで素早く選択できる場所
これも正解とは全く逆の選択肢です。「素早く選択できる場所」とは、フィッツの法則によれば「マウスカーソルの位置から近い場所」を指します。
これは利用頻度の高い項目を置くための場所です。利用頻度が低い「項目5」は、その正反対の場所に配置されているため、この説明は当てはまりません。

この記事で掲載・解説している問題の著作権は、独立行政法人大学入試センターに帰属します。

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